
共働きで子どもの習い事送迎ができない|親の現実と現代的な課題
2026年7月更新
「仕事が終わる時間に、子どもの習い事の送迎に間に合わない」「送迎の時間を作るために、どうしても仕事を調整せざるを得ない」——こうした悩みを抱える親は、今、大多数派です。
実は、これは「親の努力不足」ではなく、日本の社会構造そのものが抱える課題なのです。統計データが示す現実を見れば、その理由が明確に見えてきます。
この記事では、公開されている最新統計をもとに、働く親たちが直面する課題の実態と、その中で親ができることについて解説します。
共働きが「標準」になった日本の現実
20年前、専業主婦世帯は珍しくありませんでした。しかし、今は全く異なります。
最新統計が示す共働きの実態(2024年)
- 共働き世帯:1,300万世帯(前年比で22万世帯増)
- 児童がいる世帯の母親就業率:80.9%(過去最高)
- 20年前との比較:2004年は56.7%→2024年は80.9%(24.2ポイント増)
つまり、子どものいる世帯の8割以上で、母親が働いているのです。「子どもがいるから仕事をセーブする」という選択肢を持つ親は、もはや少数派なのです。
出典:厚生労働省「2024年国民生活基礎調査」
働く親たちの就業パターン
- 正規雇用:41%
- 非正規雇用:36.7%
- その他:10.1%
習い事は「当たり前」な時代
働く親たちが抱える悩みの背景にあるのは、子どもの習い事が、もはや「選択肢」ではなく「標準」になっているという事実です。
小学生の習い事参加率と内容
- 有料習い事参加率:約70%
- 複数習い事実施:54.7%が2つ以上
- 月額平均費用:16,676円
つまり、小学生のほぼ3人に2人が習い事をしており、その半数以上が複数の習い事に参加しています。となると、親の側も「どうしても送迎が必要」という状況が生まれるわけです。
人気の習い事TOP3(いわゆる「新3S」)
- ・水泳 31%
- ・英会話など語学 21%
- ・学校の予習・復習補習 20%
※親世代の「3S」(水泳・習字・そろばん)から大きく変化
親世代と異なり、現代の習い事は「複数実施が当たり前」という時代認識も存在します。その結果、親は必然的に送迎ネットワークを必要とします。
家事・育児時間から見えるジェンダー格差
共働き世帯で子どもの習い事送迎が成立しない理由は、実は「女性に家事・育児負担が集中している」という構造的な問題なのです。
共働き世帯の家事・育児時間(平日1日当たり)
- 妻:3時間24分
- 夫:51分
- 差:2時間33分(夫は妻の1/4以下)
妻が平日毎日3時間以上を家事・育児に費やしている一方、夫は51分に過ぎません。こうした時間的アンバランスは、何を意味するのか。つまり、妻が「フルタイム仕事」をしながら、同時に「家事・育児の主責任者」という二重役割を担っているのです。
幼い子どもがいる場合はさらに深刻
6歳未満の子どもがいる世帯では、妻の家事関連時間は7時間28分に達します。一方、夫は1時間54分です。この時点で、妻が実質的に「子育ての全責任」を負わされているという現実が明確です。
ただし、改善傾向はある
1996年には夫の家事・育児時間は20分だったのに対し、2021年には51分に増加しました。20年間で約2.5倍増となっています。ゆっくりではありますが、改善は進んでいるのです。
出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」
経済的には豊かになったが、時間は奪われた
共働きが増えた結果、世帯所得は増加しています。一方、失ったものは何か。それは、親の「自由な時間」です。
児童のいる世帯の所得推移
- 2024年平均所得:1世帯当たり820万5千円(過去最高)
- 要因:共働き世帯の増加が主
経済的には豊かになりました。しかし、その見返りに、親(特に母親)が払った代償は何か。それは「習い事の送迎」「家事・育児の時間」「自分のための時間」の喪失です。
「豊かさ」の定義を問い直す
家計の豊かさは増えても、親たち(特に母親)の心身の余裕は失われている。習い事の送迎に追われ、仕事と家事と育児に疲弊する。これが「豊かな人生」と言えるのか、という問いが生じます。
親ができること:現実的な対策
構造的な問題があるからこそ、親として「できることの限界」を認識しながらも、現実的な工夫をする必要があります。
現実的な対策の選択肢
- 1.習い事の数を厳選する(「複数参加が当たり前」の呪縛から解放される)
- 2.送迎を必要としない習い事を優先(オンライン、通園・通学先での提供など)
- 3.親同士で送迎をシェアする仕組みを作る
- 4.夫に家事・育児の明確な分担を求める(統計では改善傾向があるが、実現にはコミュニケーション必須)
- 5.完璧を目指さない:「親ができないことがある」と子どもに伝える
最後の点は、心理的なものですが重要です。親が「できない」ことを子どもに素直に伝えることは、子どもに「親も完全ではない」「人間は限界を持っている」という大切な学習機会を与えます。
親の心身の健康が、子どもの幸福につながる
「子どものために習い事をさせなければ」という親の使命感は理解できます。しかし、その使命感が親を疲弊させれば、結果として子どもにも悪影響が出ます。
共働き世帯の母親が80.9%の時代に、「習い事の送迎を親が担う」という前提それ自体が、もはや持続不可能なのかもしれません。送迎代行サービス、オンライン習い事、学校での放課後プログラムなど、社会が提供する選択肢も増えています。
子どもの適性を知ることの価値
複数の習い事に手を広げるのではなく、その子にとって「本当に向いている」ものを絞ることで、送迎負担も削減でき、子どもの集中度も高まります。当サイトの診断を活用することで、親子で「本当に必要な習い事」を見つめ直す機会が生まれます。
働く親たちが直面している課題は、単なる「個人の工夫」では解決しない、社会構造的な問題です。だからこそ、親が「完璧を求めない」「できるだけのことをする」という柔軟さを持つことが、親自身の幸福、そして最終的には子どもの幸福につながるのではないでしょうか。
出典・参考資料
- 文部科学省(スポーツ庁委託)「体力・運動能力調査報告書」— 新体力テスト8種目の全国平均値データ
- 2024年国民生活基礎調査(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa24/index.html
- 共働き世帯の状況(労働政策研究・研修機構) https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2025/04/c_01.html
- 令和3年社会生活基本調査(総務省統計局) https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/index.html
- ※ 運動発達・スポーツ科学に関する内容は、スポーツ科学分野で広く知られた知見をもとに当サイトが解説したものです。